私は20年以上前、日本初の本格的なプライベート・エクイティ・ファンドの一つであるフェニックス・ファンドの創設に関与しました。それ以来、日本のプライベート・エクイティ市場が成長していく過程を見続けてきました。

日本のプライベート・エクイティは、事業承継という社会課題の解決に貢献し、大企業の事業再編を促進するなど、重要な役割を果たしてきました。今日では、日本経済に欠かせない一つの産業にまで成長しています。

一方で、私にはもう一つ期待していたことがありました。

それは、日本企業が持つ優れた技術を見つけ出し、経営資源と世界市場を組み合わせることで、その価値を何倍にも高める資本が生まれることでした。

しかし残念ながら、日本のプライベート・エクイティは、「銀行からいくら借りられるか」「どのような条件なら、より多くの資金を調達できるか」という金融レバレッジの技術を磨くことには成功したものの、「どの技術を世界に展開すべきか」「複数の技術をどのように組み合わせ、新しい産業をつくるか」という技術レバレッジには、十分な関心を向けてこなかったように思います。

金融レバレッジそのものを否定するつもりはありません。適切な資金調達は、企業の成長に不可欠です。

しかし、借入倍率を高めることと、企業の本質的な価値を高めることは同じではありません。金融技術だけでは、新しい製品も、新しい市場も、新しい産業も生まれないのです。

日本に不足しているのは技術ではなく経営である

日本には、世界を変える可能性を持つ技術が数多く存在しています。

大企業の研究所だけではありません。地方の中堅・中小企業にも、素材、製造装置、精密加工、ロボティクス、環境技術など、世界で十分に戦える技術が眠っています。

国内市場がある程度あることもあって、残念ながら、多くの技術が国内にとどまり、十分な事業規模に育っていません。

問題は、日本に技術がないことではありません。その技術を世界市場へ持ち出し、他の技術や企業と結びつけ、事業として成長させる経営力が不足していることです。

日本企業には、「失敗しない経営」は数多くあります。しかし、「世界市場を取りに行く経営」は、まだ決して多くありません。

リスクを避けることが経営能力であるかのような企業文化の中で、優秀な技術者が埋もれ、世界を変える可能性を持つ技術が社内に眠り続けています。

技術レバレッジとは何か

私が考える「技術レバレッジ」とは、一つの技術だけに依存することではありません。

異なる企業や国が持つ技術、データ、人材、販売網、資金を組み合わせ、それぞれを単独で活用する場合よりも、はるかに大きな事業価値を生み出すことです。

例えば、優れた製造技術にAIを組み合わせる。画像認識技術にロボティクスを組み合わせる。さらに、実際の取引データと世界各地の販売ネットワークを結びつける。

その結果、品質、価格、生産性、販売力を同時に高め、これまで存在しなかった産業モデルをつくることができます。

金融レバレッジが資金によって投資効率を高める仕組みだとすれば、技術レバレッジは、技術とデータの組み合わせによって企業の成長力そのものを高める仕組みです。

これからの企業価値は、借入金の大きさではなく、「どのような技術とデータを持ち、それらを世界の技術や市場とどのように結びつけられるか」によって決まるようになると考えています。

日本発ではなく「多極軸グローバル化」へ

多くの日本企業が「グローバル化」を掲げています。

しかし、その多くは、日本企業を中心に置き、日本でつくった製品やサービスを海外へ販売するという従来型の発想にとどまっています。

私は、この発想だけでは、これからの世界市場で勝つことは難しいと考えています。

今後必要なのは、日本だけを起点とするグローバル化ではありません。世界各地の強みを複数の起点として、それらを国境を越えて結びつけるグローバル化です。

米国のAI、欧州の環境技術、イスラエルのサイバーセキュリティ、シンガポールを中心とする半導体ネットワーク、そして日本の素材・製造技術。経済安全保障にも十分配慮しながら、これらを最適に組み合わせ、新しい産業をつくっていく必要があります。

私は、この考え方を「多極軸グローバル化」と呼びたいと思います。

技術も市場も、一つの国だけで完結する時代ではありません。日本企業がすべてを自前で抱え、日本を中心に世界を考える発想から卒業しなければなりません。

金融と技術の主従関係を変える

これまでのプライベート・エクイティでは、金融、法務、M&Aの専門家が中心となり、技術者は投資判断を補助する役割に置かれることが一般的でした。

しかし、これからは、その主従関係を変える必要があります。

世界の技術動向と顧客ニーズを理解する技術者や事業家が中心となり、その周囲を金融、法務、M&Aの専門家が支える。

金融を否定するのではありません。金融を、技術と事業の成長を支える本来の役割に戻すのです。

日本には、一定規模の国内市場があります。それは日本企業にとって大きな強みでしたが、同時に、世界へ挑戦しなくても生き残れるという安心感を与えてきました。

その結果、多くの企業が世界市場を攻めるよりも、国内市場を守ることに慣れてしまいました。

しかし、人口減少が進み、産業構造が大きく変わる中で、国内市場だけに依存する経営には限界があります。

Eco-Movementが実現しようとしていること

私が取り組んでいるEco-Movementも、単なる中古端末のリユース企業やBPO企業を目指しているわけではありません。

スマートフォンやパソコンなどの再商品化に、AIグレーディング、画像認識、ロボティクス、データ消去、価格分析、販売チャネル最適化といった技術を組み合わせようとしています。

さらに、端末一台ごとの品質、販売価格、販売期間、返品、保証、最終利益などの実取引データを蓄積し、国内外の販売ネットワークと接続します。

これにより、大量の中古端末を、より速く、正確に、最も収益性の高い市場へ流通させる仕組みを構築します。

そして、海外の技術企業、販売事業者、金融機関、物流会社などとの連携を通じて、この仕組みを日本国内だけでなく、世界で利用できる循環型流通プラットフォームへ発展させたいと考えています。

これは、AI、ロボティクス、データ、物流、金融、グローバルな販売網を結びつける、Eco-Movementなりの「技術レバレッジ」の実践です。

次の時代の資本主義へ

これから必要なのは、金融レバレッジを完全に否定することではありません。

金融レバレッジだけに依存する企業価値向上から脱却し、技術、データ、人材、市場を組み合わせることで、事業そのものの競争力を高めることです。

  • 金融レバレッジだけでなく、技術レバレッジへ
  • 日本中心ではなく、多極軸グローバル化へ
  • 企業を買うことだけでなく、世界の技術と事業をつなぐことへ

次の時代の資本主義は、この三つの発想によって大きく変わると私は確信しています。

日本には、その変化をリードできる技術が、まだ数多く残されています。

必要なのは、資金だけではありません。世界に存在する優れた技術、企業、人材、市場と連携し、互いの強みを持ち寄り、新しい産業をともにつくる覚悟です。

Eco-Movementは、その具体的な実践者になることを目指します。